2016年2月7日日曜日

02/6/16 【J君3:もう、たくさんだ~!】

カナダに住んでいるにも関わらず、
今冬は暖かい冬を満喫しています。

おもちゃの恐竜の気持ちは?
「もう、たくさんだ~!」

心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする  『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー
上原英子です。 

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今回はJ君シリーズ3を綴ります。

シリーズの1・2は以下をご覧ください。
 
10/28/15 【J君1:世界一のダメ人間】

 http://kokoronoartwork.blogspot.ca/2015/10/102815.html

 11/4/15 【J君2:対人関係音痴って?】
 http://kokoronoartwork.blogspot.ca/2015/11/11415.html

J君(8歳)は数学は天性的にできるが、他の面で幾つかの発達障害の症状が。

彼は特に感情の制御に問題がある。

自分が気に入らないと癇癪を起す。
           ↓
それを先生たちに指摘されると激怒する。
           ↓
悔しくて泣き崩れて別室送りになる。

 J君とのセッションは初回から破壊的な感情の嵐

台風の目の存在の彼なのに、 自分は被害者だと信じ込んで止まない。 

一人も友達がいないJ君は、友達が欲しくて仕方ない。

でも、自分のやり方を押し付け、威張り散らしたりするので友達ができない。

それは認めないので、J君はいつも被害者。
悪いのは周りの人。

プレイ・セラピーにもその様子が現れる。
 
3つのフィギュアを繋げて、
J君「友達だから、いつも一緒にいる」

それぞれが自由でないと、やがて決別するのでは…

そんなJ君の自己評価はとても低い。

J君「自分なんか死んでしまった方がいいんだ」

担任の先生にそう漏らしたという。

私とはこんな会話を交わした。
 
J君「注意欠陥多動障害がある人は、いつも不安に
駆られているんだって知っていた?

私「(知っていたけど知らないふり)ふぅ~ん、そうなんだ」 

J君「僕は注意欠陥多動障害があるから、
いつも不安に駆られているんだ」 

私「それはとっても大変そうね。どんな感じなの?

J君「自分なんか死んでしまった方がいいって感じる時もあるよ」
 
最初は私の前で荒れ狂うばかりのJ君だったけど、
この頃、こんな心情を吐露するようになってきた。

彼なりに私と関わっていく中で、

「この大人は信頼して自分の気持ちを伝えられる」

そう感じて少しずつ心を開いていったのだろう。



難しい言葉を使うこともあるJ君だが、遊び方はとても幼い感じ。

感覚的な過敏/鈍感さのある発達障害の生徒は手でものを触りまくることも。

そんな生徒たちに人気なのがこちら。

 
折り紙で巻貝を折って、そこにキネティック・サンドを
アイスクリームに見立てて載せてみたJ君 

これはスウェーデン生まれの不思議な砂 
「キネティック・サンド(動く砂)」

 粘土のように団子状にできたり、
ナイフで切ることもできるのです。
 持ち上げると砂のようにホロホロっと崩れます。

http://ggsoku.com/cul-on/kinetic-sand/

 
生徒に人気の口が開いている恐竜 

J君はこれにキネティック・サンドをどんどん詰め込み始めた。

私は彼がどれだけ砂を恐竜の口の中に詰め込むのか見守っていた。

私「ずいぶんたくさん入ったね。
この恐竜は今、口がきけないけど、
何て言いたいのかな?」

J君「もう、たくさんだ~!」

対人関係音痴で人との機微が全く分からず、
親分風を吹かせては嫌われているJ君。

彼にとって人との関係は、わけわからなくて、
もう、たくさんだ~なんだろう。

私はJ君の代りに彼に友人を作ってあげることはできない。

対人関係音痴なJ君は自分の声のトーンを知り、
周りとハーモニーを奏でる術を自分で体得していくしかないのだ。

手で感触を感じるのが好きなJ君は色鮮やかな
プラスティシーン(粘土)で何か作り始めた。



J君「スーパーマリオのマッシュルームを作る」

私「いいね!でも、今日はあと5分でおしまいよ」

J君「じゃあ、ぼくのこと手伝って、茶色の粘土を
   渡してもいいよ」

私「・・・?
 私が手伝いたいかどうかは、私が決めるから。
 今の命令口調だったら、手伝いたくない~」
 
J君しばし考えて


J君「あと5分しかないので、粘土を渡すのを

   手伝って下さい」

私「いいよ、私が手伝ったら早く仕上がると思ってたよ。
  じゃあ、手伝うね」

このようなやりとりから何かを学んでいるJ君。
 
J君が作ったスーパーマリオのマッシュルーム

注意欠陥多動障害を持っていて、行動が衝動的なJ君。

以前、J君は新しいおもちゃを探して、
私のバッグをやさがししようとしたことがあった。

私「それは私のバッグで、勝手に中を探られたくない」

J君「新しいおもちゃないの?」

私「そういう時はいきなり行動を起こす前に、

  先に言葉で訊いてほしいわ」

J君「…」

この時、J君は何でこんなことを言われるのか?だったようだが、
次に新しいおもちゃを探したい時に手が出る前に私に尋ねた。

J君「新しいおもちゃないの?」

彼は私との関わりから確実に
対人技術を学んでいる! 

彼が人との関わり方を学んでいく道のりは
長そうだけど、
私は歩むに値する道程だと確信している。



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