2015年11月19日木曜日

11/18/15 【K君1:虐待体験から生まれたのは・・・】

今週は雪どころか♬あられや~コンコン♪が降り、
文字通りワンコは嬉しそうに外を駆け回っていました。
児童虐待は子どもの心身に痛みと傷跡を残します。
(今回の掲載画像はネットの拾い物です)

心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする 『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー
上原英子です。


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今回は児童虐待という心が重た~くなるような、
だけど、どのようなものか知ることがとても大切な内容です

K君は問題行動のある生徒の代替教育プログラムの
年少クラス(幼稚園~小5)の中では年長あたる10歳の少年。

クラスの説明はこちらへ。
http://kokoronoartwork.blogspot.jp/2015/10/101415.html

彼は不安感が強く一般クラスの中ではやっていけないという
理由でこの学級へ入ってきた。

最初のクラスでのセッションの日、K君は私と目を合わせようとせず、
ため息をついたり、ひとりでブツブツいいながらお絵かき。

彼が『今日の気分チャート』を書き入れた時、
「不安でうつ状態」と記した。

でも、私は彼が描いた顔の表情から、

私「落ち込んでいるというより怒っているように見えるんだけど、
どうかな?」

と話し掛けた。

そんなことを言われたことない彼は驚いたようで、私が指摘した気分を描いた自分の顔を、落ち込んでいる様子に描き直していた。

私にはK君は本当は親や先生など大人に対していろいろなことに
怒っているんだけど、自分は子どもで大人には敵わないと諦めている。 

だったら、不安で落ち込んだ可愛そうな弱者:被害者路線で行ったら
大人から同情してもらえるので演じていると感じられた。

最初の一対一のセッションの日。
彼は喜んで小走りして私についてきた。
彼の足元を見ると、穴が開いた靴を履いていた。

私「この間の私のアートの時間はどうだった?辛そうに見えたけど。」

K君「知らない大人が来たから緊張してたの。僕はシャイなんだ。
でも、先生は一度会った人だから、今日は平気だよ」

近くに座ったK君からは何日もシャワーを浴びていないような臭いが。
私とアート・ゲームをするK君の手の動きを見ていたら、袖口が切れて
ボロボロの服を着ていた
捲り上げた袖の下から覗く腕には掴まれたような手の跡が痣になって
残っていた。 

K君が家で不当に扱われているのは明らかだった。

心のドアを堅く閉ざしているK君の本当の気持ちは、大人に
関心を持って欲しい、面倒みて欲しい、構って欲しい、そして、
愛して欲しい。

心の一番底にある気持ちは、親から無条件に愛されたい

実生活ではその切なる願いは叶わず、虐待(ネグレクトも含む)を受けている。

そこで、期待に応えてくれそうな大人に出会うと心を全開して、仔犬のように
無防備になり、寝転がってお腹を見せて完全降伏してしまう。

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私とのセッションでは、いつも私を喜ばそうと私の絵を描いてみたり、
私を褒めてみたり、健気にいい子を演じるK君。

家族の話になると、やさぐれた親が彼を乱暴に扱う様子や、世話をされずに放っておかれている状況が表われ、私の心は重くなってきた。

彼のお絵かきのプロセス:何をどのように描いたかを観察していると、
彼の心には不安の大きな雨雲が空一面に垂れ込めているのが分かる。

虐待にあっている子どもはいつも安心しきれずに
どこかビクビクしている。

部屋の外のちょっとした物音にギクッとするK君。
不意に暴力を振るわれた時の恐怖が身体に沁みついているのかも知れない。

今日は紙飛行機を一緒に折った。
私が持っていったポジティブな言葉のシール(先生用に100均などで
売っている)を見せて、好きなものを選んで張ったK君。

WOW!
SUPER STAR
GREAT

K君は親や先生から言って欲しくても、誰からも言ってもらえない言葉を
選んだかのようだった。

それらのポジティブな言葉を自分に掛けていたK君。

私が席を立とうとした時、机の脚に靴先が当たって音と立てた。
それまで楽しく飛行機を飛ばしていたK君が咄嗟に振り返った。


K君「先生、大丈夫?
   脚をぶつけたの?
   痛くなかった?」


親に心身の暴力を振るわれ、痛い想いをしてきているK君。
男児の場合は荒くれ不良化したり、暴力の加害者化していくケースが多い。

K君は自分の痛みを感じた体験から、他者の痛みに共感して思いやりを向けている。

彼の心の強く優しい面を感じて私の心の中に温かい気持ちが湧き上ってきた。


私はK君との間にアート・セラピーを通して信頼関係を築いていきたい。

大人の中には自分と心を通わせられる人もいる体験をして欲しい。


その体験は彼の心の癒しを促していく。

今日は、暗闇の中にも一抹の希望の光が見えたような気がした。

これからのK君がこの素晴らしい人間性を伸ばしていけますように!




2015年11月15日日曜日

11/14/15 【W君1:生まれ直したい!】

とうとう11月12日に初雪を迎えました。
これからカナダの長い冬が始まります。

この時は大事件が起こるとは、予想していなかった~
  
心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする  『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー 
上原英子です。 

 
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学校でのアート・セラピーの個人セッションで出会うのは、
何かしらの問題行動のある4歳~18歳(現在は16歳)の生徒たち。
 

学校外で問題行動のある生徒への私のアート・セラピーの個人セッション希望
場合は、個人開業の部で受けて頂くことに。

W君(8歳)は、私の個人セッションを始めて半年になる。

いつも反抗的な態度で、大人の言うことをきかない。
大人の指示を無視しておいて、それを叱られると被害者に早変わりだそう。

私のセッションでも命令口調で話し、ゲームのルールは自分に有利に作り、
そんなのイヤだと言うと「もう遊ばない」と放棄。


ほんと~に可愛くない態度!


私が持って行ったオモチャを壊したり、勝手にペンを刺したりもする。


W君は最初はアートなんかしたくないと、席にもつかなかった。

その内に椅子を集めてそこにおもちゃを持ち込んで、
自分の隠れ家のようにして遊ぶようになった。

毛布が掛かっている所はW君が作った『作品
 
この椅子の間を通り抜ける動作を何度も繰り返す。

私には、まるでW君が母親の体内から生まれ直しているみたいに見えた。 



私は家族内で心身が傷ついたり、自己価値観が低い生徒が、
儀式のようにこの動作を続ける姿を何度も見てきた。


彼の心の中に生まれ直すような動作が取りたくなるよう
などんな想いがあるのだろう?
日本で講演する時にも使っている、鳴き声&目がライトで光る黒猫ちゃん 

今回のセッションにビックリなおまけがあった!

W君「この猫のライトを点けたいから、部屋を真っ暗にして」


私「真っ暗にして怖くないの?」

W君「大丈夫、全部灯りを消して」

真っ暗な部屋で猫の目のライトを点け、興奮気味のW君。
今度はかくれんぼしたいと言い出した。

W君「30数えたら探すから、隠れて!」


私「え~っ暗い中で隠れるの?見えないよ」

W君「いいから~」

暗闇の中でのかくれんぼを始めて、私を見つけた。
今度は自分の番になったW君。

私が30数えて探し始めると、か細い声が聞こえた。


W君 「ボク出ていけない…」

私「どうして?そこの角にいるの、みっけ~」









































W君「おもらししちゃった~」


私「え~っ!!!」

W君は8歳になってる。

今まで4歳児のセッションでも、こういうことは起らなかった。

小3で、家の他でもおもらしって、きいたことなかった…

W君「このままじゃ帰れないよ」 

私「じゃあ、どうしたらいいと思う?」 

W君「替えのパンツとジーンズがいるよ」

私「そうだね。でも、ここにはないよ」

W君「英子が買ってくる」

私「そういう考えもあるね。でも、私はここから離れられないよ」

W君「・・・」

8歳児なりにこの問題を解決しようと知恵を絞っているのが分かったので、
私の携帯電話を取り出して、父親の番号を訊ねて電話を掛けた。

W君「お父さん、ボクね、パンツにおしっこしちゃったの」

いつも私に命令したり無理難題言ってる時と打って変わって、
まるで幼児のような救われ難い声を出してるW君。
なかなかの役者じゃの~

会話が要領得ないので、私が替わる。
W君がおもらししたので替えのパンツとジーンズをお迎えの時にお願いする。

しばらくして父親が迎えに来た。 

父「Wがおもらししたそうですね。」

私「そうなんです。電気を消して暗闇にしたら興奮して、
かくれんぼしたいって遊んでいたんです。」

父「暗い所が怖いのに、先生の前でかっこつけたかったんだな」

そうだったの?
実は暗闇で隠れるのが怖かったの?

W君の意外な一面が見られたセッションとなりました。

2015年11月9日月曜日

11/08/15 【やっと繋がったね】

11月に入って朝晩は零下になることも。
今年もそろそろ初雪を迎えそうです。
今日はスーザン・デニスさんの表現芸術療法ワークショップ
『地球のメッセンジャー
に参加してマンダラ作成しました。

心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする  『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー 
上原英子です。 

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講師のスーザンさんは昨年からこの地域で月に一度の
表現芸術療法ワークショップ・シリーズを催しています。

先住民族の血を引く彼女はその文化や儀式にも通じていて、
ワークショップにも取り入れているのが興味深いです。

会場に着いてすぐに利き手の右手で裏にしたカードから一枚選んでみました。

「私に起ることすべてによって気分が高められる。」

「あなたの内側で分かっていることを信じなさい。」

「自己表現:私のユニークさを認めることによって、

自分の個人性を光栄に感じる自由があります。」

今の私はそういう状態なのね。
会場内は中心に向かってヨガマットが放射線状に敷かれてました。

中心にはキャンドルと貴石(クリスタルなど)、クレヨンや色ペンが。


参加者は貴石や石を持参だったのですが、私はピンとくるものが探せずに、
以前、女児のアート・セラピー・グループで教えていた時に作成した

キラキラ猫を持参しました。
楽しい!遊ぼうよ!
この猫は、私のインナーチャイルドのシンボルとして参加


まず、スーザンさんが心の旅のための儀式として、東→南→西→北に置いたキャンドルとそれぞれのシンボルに祈りを捧げ、
参加者の私たちもその方向に向かって敬意を示しました。


座ったり、寝転んだり、リラックスした体勢になった参加者に
スーザンさんが先住民族のシンボルを手描きしたハンドドラムを叩き続け、
私たちの心の旅が始まりました。
私のイメージに表れたのは北の先住民族であるイヌイットのおばあさん。
彼女は北:死と霊性の方角にいる老賢者の象徴?
そして、彼女の連れなのか、犬?狼?が表われました。

地球のメッセンジャーのガイドたちのイメージは、植物と動物のようですが、
私には植物のイメージが表われませんでした。

他の参加者は表われたイメージについて何ページも書き連ねていましたが、
今回は全く言葉が湧いてこなかった私。

そこで、マンラダ作成に没頭しました。

このマンダラのタイトルは『やっと繋がったね』

自分の4つの内的なファンクションが旅に出てさまよい、最終的には自己統合されて四葉のクローバーのような形に納まりました。


外側は金と銀がDNAのように糸が縒られて状態になりました。

自分にとっては深い意味を持つマンダラができあがり、満足でした。

グループ全員で心の旅の過程をシェアする際に、このマンダラに表された
私の心の旅を身体表現してみました。 

ワークショップ後に今度は左手で裏にしたカードから一枚選んでみました。

「私は自分なりのダンスを踊る。」

「(心の中が)静止する時間を持ちなさい。」

「真実:私は停まって耳を傾ける時、自分の真実に気が付き、

それを自分の判断や行動のガイドとして用います。」

心の旅を踊ったし、スーザンさんがワークショップで私たちに
語りかけたことと合致。


実り多かった今日のセッション。
また彼女のワークショップに参加したいです。








2015年11月5日木曜日

11/4/15 【J君2:対人関係音痴って?】


ハロウィーンが終わって、学校は落ち着きを取り戻しました。
しばらくするとクリスマスの準備でまた慌ただしくなります。


私はパクパクと呼んでいた折り紙は、こちらではクーティーキャッチャーと
呼ばれていて、番号や占いの結果を書いて遊びます。


心を紐解くアート作り:プロセスを大切にする  『心のアート・ワーク』の
カナダBC州公認アート・セラピスト&同州公認心理カウンセラー 
上原英子です。 

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問題行動のあるお子さんと一対一のアート・セラピーのセッションをしています。

彼らが親御さんや先生など大人から叱られる行動を取ってしまうのは、
どうしてなんだろう?

セッション中の彼らの行動観察から私の内でさまざまな気づきが起こります。

J君(8歳)は本日生まれて初めて折り紙に挑戦!

折り紙の本を見ながら私と一緒に折っていきます。


数学が天才的にできるJ君は、日本語の折り紙の本の図式を見ただけで、
どんどん先に進んでいきます。まさに圧巻!

でも、注意欠陥多動障害を持っているので段取りをきちんと
終わらせながら次の段階に進むことができないのです。

折り方は分かっているのに焦ってぐちゃぐちゃなまま次の段階を折るので、
彼が作った折り紙作品は遊べない代物になってしまいます。

J君「ボクが作ったクーティーキャッチャー、開かないよ」

私「焦って折ったから、ところどころきちんと折れてないよね」

J君「何だよ~!(怒って椅子を蹴る)」

私「これをどうしたいの?」

J君「これで遊びたいよ~開くようにしてよ

私「それは私にお願いしているの?命令しているの?」

J君「ええっと…」

どうしていいのか咄嗟に分からないJ君。


人とうまく関われず友達が一人もいないJ君は、 自分の置かれた状況や、相手に対しての配慮が全くできない面があるのです。

私「私にお願いするなら、折ってもいいよ。
命令するなら、やらない」

J君「じゃあ、折って下さい。お願いします」

私は手間を掛けて、なるべくJ君が折った部分は残して
作品をなんとか遊べるレベルにしました。

セッションの最後に本日の作品の写真を撮る時に…





















































折角、私が折り直したクーティーキャッチャーを
グシャと丸めてポイッと放り投げました。

私「ガッカリだな~これは私が手間かけて折り直したのよ」

J君「だって見た目がよくないもん。こんなのいらない」

だから~
それが対人関係音痴だって言ってるの!

人との間の機微が分からないのは表面に表れていることしか見ていない。

そこまでに至る過程で相手との間にどのようなことがあっての
結果なのかを分かっていないから起こる無礼な言動。

私「見た目がいいものだけを写真に写したかったんだね。
それは分かるよ。

私はJ君の頼みをきいて折り紙を折り直したよね?
こんなふうに丸めちゃうなら、もう手伝いたくないよ」


J君「???」

J君はこれからの私のアート・セラピーのセッションでの関わりから、
どんな成長を見せてくれるのか、楽しみです!